理念の実現ができる組織を目指して 横浜国立大学体育会サッカー部の組織改正
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理念に惹かれて選んだ道
私たちはなぜサッカーをするのか。私たちは何のために、毎日汗を流し懸命に練習をするのか。高校生までのサッカー生活においてそんなことを考えたことはありませんでした。
2019年4月、そんな私が何となく訪れた体育会サッカー部の説明会で最初に伝えられたのは横国サッカー部の理念についてでした。
「世界を楽しくする挑戦」これが本サッカー部の理念である。我々がなぜサッカー部として活動するのか、それは自分の中の世界、地域の世界、大学サッカーの世界を楽しくするためである。この理念を聞いたとき他のサークルでの新歓にピンと来ていなかった私は、この部活に入りたいと強く思いました。
グラウンド上では、Aチームを目指してプレーし、Aに上がれば怖い3,4年生にビビりながら周りについていくので必死な1年を送りました。その一方でグラウンド外の活動では色々なことに関わることができました。スポンサー活動や地域貢献活動など、行動にブレーキをかけがちな私でしたが、先輩や同期の行動力に引っ張られ、いい経験がたくさんできたと思います。
そしてふと考えると、自分たちの学年が部活を引っ張るシーズンがゆっくりと、しかし確実に迫ってきていたのです。
改正前の組織、その特徴
横浜国立大学体育会サッカー部は神奈川県リーグに所属し、推薦制度がない中で関東二部昇格を目標に活動しています。チームの大きな特徴としては、学生主体であることが挙げられます。チームの指揮から、練習場所の管理、外部団体との交渉、スポンサー活動までほとんどが3年生を筆頭に学生によって行われています。
上の図は以前までの組織を図に表したものです。元々組織図はなかったため、今回の改正にあたって作成しました。
首脳の下にある班は部員全員が把握し、活動していましたが、SNSやスポンサーなどは決まった部員のみが参加し、他の部員はどのような活動が行われているか認識されていないようなこともありました。また、大会参加や会計の業務は3年生が各自の仕事として行っていました。
ふとした疑問、始まった組織改正
2020年3月、当時の2年生のプレイヤーとマネージャーの有志で話し合いが行われました。内容は、それぞれに対する意見交流が主なものでしたが、その中で、次のチームについての話題もあがりました。主将はだれがやるのか、首脳陣はどうしようかなど、前年度通り枠組みで話が進んでいましたが、そこで一つ疑問が生まれました。なぜこのような仕組みで運営しているのだろうか?というものです。もちろん今までその組織体制でやってきたのだからそれなりの理由はあるはずです。しかし、「今までそうだった」は続ける理由にならないと考え、そこからコロナ禍で思うような活動ができない中で組織改正に向けての動きが始まりました。
ちょうど私は大学で組織論の授業をちょうど受けていたこともあり、実際に70~80人が所属する組織に当てはめて考える機会ができ、興味を持って取り組むことができました。
理想の組織、生かしたい自分たちの強み
組織を改正するにあたってまず行ったのは情報収集です。組織改正メンバーの高校の同期で上智大学サッカー部に所属している方に話を伺いました。上智大学のサッカー部は同じく学生主体のチームで、運営に関して課が設定されており、1,2年生も参加しているとのことでした。これをもとに、横国サッカー部の強みを生かすこと、人材に合わせた仕組みを作ることを目標として、改正案を作成しました。
次に現首脳と元首脳に相談し、実際にチームを率いた経験のある先輩方の話をもとに改正案を調整していきました。
また、同期全員とのミーティングも数多く行いました。学年で20人いるのでzoomのブレイクアウトルームを活用し、活動自粛時の近況報告や雑談などもしながら意見をもらい、全員が納得できるように案を練っていきました。
意識したことは、基本の組織体制や分業の仕組みをもとに、自分たちの強みや伝統を生かすことです。私は、チームのことを考え自発的に行動できることが横国サッカー部の強みであると考えていたので、日々の運営活動を不備なくこなし、より自発的な活動が活性化するように組織を整えようとしました。
組織改正による変更点、その目的
組織改正による大きな変更点とその目的は以下のとおりです。
①運営局と蹴球局に大別し、それぞれのリーダーを配置する。
・元来存在していた班活動を継続し、運営について課を配置することで横国の強みを生かしつつ、仕事を可視化する。
・専門性を持ったリーダーを配置することで、情報の流れをスムーズにする。
②首脳制度を廃止し、権限を各課、班に委譲する。
もともとは、首脳がほぼすべての意思決定を行っていたが、関連する事柄に対して、意思決定に参加することで貢献意識や責任感、やりがいを高める。
③低学年の組織運営への参加を促す
運営局にも1,2年生を配置することで、同じく部への貢献意識を高めるとともに、引継ぎをスムーズにし、同じ問題に何度も直面することを防ぐ。
組織改正から3ヶ月、掴んだ確かな手応え
組織改正を行い新チームが発足して、3カ月が経過しました。依然として社会情勢により活動は大きく制限されていますが、現時点での状態を書きたいと思います。
まず、今までは首脳が全てを仕切っていて一部の学生主体の運営でしたが、今回の組織改正によって仕事に全員が関わるようになり、全員で活動ができているように感じます。
しかし組織は確実に複雑化したため、コミュニケーションの必要量は増えました。これは予測できていたもので、定期的なミーティングを行うことで解決しています。
また各課長が責任感を持ち、仕事を管理してくれているため、主将副主将の負担も軽減しました。またそれぞれの課員や課長に相談する相手が存在するため、積極的に動けているように感じます。
課題としては、仕事の振り分け方が挙げられます。また現課長には、引き継いだばかりの仕事を1年生にも伝えながらこなしていくことが求められます。これは主務のサポートをもって解決していきたいです。
組織改正の活動を通して、一貫して考えていたことは、どうすればより良い組織が作れるだろう、どうしたらみんなが部活にやりがいを感じられだろうということです。やらなければならないという使命感より、できたら楽しいだろうというポジティブな捉え方をしていました。
組織改正を通して感じた、組織の奥深さ
以下は組織改正に携わった個人の感想です。
この組織改正を通して組織の形に正解はないというのを感じました。組織の規模、目標、在籍する人間の特徴など様々な要因に左右され、自分達で情報を集め何度も話し合い、作っていくことが重要です。
横国サッカー部は2019年に理念が設定されました。これは組織の基礎が作られたといってもいいでしょう。2020年にはスポンサーが付き、外部コーチを招聘するなど外部へのアプローチが増加し、部活の活動の幅が広がりました。そこで、次に組織内部を変えたいという思いが募ったという流れです。あくまで組織改正は理念達成への手段に過ぎません。
今回の組織改正は、成功かどうかまだわかりません。1年後、5年後、10年後、横国サッカー部が強くなるために、世界を楽しくするために、これからも、絶えず活動を続けていきたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。記事中にあったように、組織の形に正解はなくひたすら最適解を追求するしかないと思います。1つの例として、参考になれば幸いです。
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