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箱根駅伝出場を目指して-関東学院大学陸上競技部が取り組むスポンサーシップ-〈前編〉

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2020年07月31日

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関東学院大学陸上競技部

駅伝が中心の関東学院大学陸上競技部は、箱根駅伝のコースにほど近い神奈川県・横浜市を拠点とし、過去6回の箱根駅伝出場経験を誇る。ここ数年は本選出場から遠ざかってはいるものの、現在、ラグビー部、硬式野球部と共に大学の特別強化部に指定され、2004年以来の出場を目指し活動している。

 

関東学院大学陸上競技部のゼネラルマネージャー(GM)を務める上野敬裕さん。チームの在り方や指針を定めていく重要な立場であり、現場で監督やコーチが学生の指導に専念できるよう、環境整備に取り組む役割であるGMとして、マネジメントの観点から特にチームの強化において欠かせない、資金調達の取り組みに注力されている。上野さんは潤滑な資金運用をするために、どのような視点でスポンサーシップを行っているのか。具体的な取り組みについてお話を伺った。

 

前編

資金調達の現状

-大学の方針がある中で、陸上競技部が特別強化指定部活として運営されていますが、その関係性はどのようなものでしょうか。また、スポンサー獲得などの方針についてはどのような影響がありますか。

大学の中での特別強化部が、硬式野球部とラグビー部と陸上競技部の3つとなっていて、大学からのバックアップは非常に良いです。また、個人的な見解ではありますが、こらからの大学スポーツは大学の強化費に依存して運営していくというよりは、理想論ではありますが自主自立、大きな話で言うとJリーグさんのクラブのように自主運営できるようなレベルにまで持っていきたいなという思いはあります。そういった方針やビジョンを描いて取り組んでいます。

 

-大学ではドーム社やギオン社など様々な企業との連携を行っていますが、大学との連携と、部としての連携の関係性はどのような形ですか

ドームさんは直接的に部の活動を支えていただいています。その部分の連携に関しては大学とも折り合いをつけながら行っています。また、ただ物や資金を提供していただくという形だけではなく、お互いがリソースを共有しながら利益を得られるような活動を心がけていきたいと思っています。

 

ご自身のnoteでも発信されていた、スポンサー獲得で意識されている点について詳しく伺わせてください。

(参考:https://note.com/takahiro1213/n/nd6eb5493fc6f

スポンサーメリットは非常に重要だと思っています。現在の部は、広告価値がどれだけあるかを考えると、箱根駅伝にこれだけ出ています、というような成績でのスポンサーセールスがしにくい状況です。企業さんによってもスポンサーメリットは切り分けて企画書を作っていて、企業さんごとのニーズに応じたスポンサーメリットを提示していくことを心がけています。具体的には、企業様のニーズが何なのかを読み取ったり、ヒヤリングするなどして、①売上向上に寄与するスポンサーメリット、②ブランド力向上に寄与するスポンサーメリット、③社会貢献活動・CSR活動に寄与するスポンサーメリットという、主にこの三点でのスポンサーメリットメリットを組み立てております。

また、具体的に取り組めてはいないのですが、小口スポンサーも非常に重視していています。スポンサーという言い方が適切か分からないですけれども、企業さんや個人の方からの寄付が増えています。そこも広い意味でのスポンサーという認識でいます。

 

-スポンサーメリットという観点で、部としてリターンをしていく必要があると思いますが、そのための部の体制づくりで取り組んでいることはありますか。

ただ物や資金を頂いてユニフォームにロゴをつけて活躍すれば良いという話ではなくて、スポンサーシップをチームに浸透させて、本当の意味での良い形でのスポンサーシップが成り立っていかないといけないと思っています。

 

-学生視点で考えた時に、具体的にどのような取り組みを意識することが求められるでしょうか。

箱根駅伝を見ていると色んな企業が入ってきていて、チームによっては色々なものが届いていると思います。スポンサーさんからするとそれを提供したことで色々と考えていると思いますが、受取手の選手からするともらってラッキーという選手もいれば、SNSでアップして特徴などを挙げている選手もいます。企業側から見たときに、商品をSNSにあげて感想やレビューを書いてくれて、それをファンの子がいいねを押してくれることで、提供した価値が出てくると思います。スポンサーとしては、そういった選手に支援したいと思いますので、学生もこの視点を持ってほしいし、指導者も教えたり発信したりしていかないといけないと思いますね。

 

-スポンサー以外の資金は、大学からのご支援と寄付金等になりますでしょうか。

寄付の割合も以前に比べたら増えていて、OBOGの方から定期的にご寄付いただき、お礼状出すというようにやっています。しかし、寄付とスポンサーはやはり意味合いが変わってきて、寄付金だけに頼っていくのは色々な意味で行き詰まることもあって、寄付をしていただける方がいなくなったら終わってしまいます。そういう意味でもスポンサーシップに力を入れていきたいと思っています。

 

-資金調達を行った上で、どのような領域に投資されているのでしょうか。

今のところ、合宿や遠征で監督の希望するところまでできていないので、その部分に資金を投入したいと思います。あとは、合宿所など設備面に関しても老朽化してきているので、資金を調達して改装もしたいと思っています。



地域に密着した取り組み 

-同じ方向を向いて取り組んでいく企業を部としても選定していく必要があると思いますが、選定の対象の軸はどういったところでしょうか。

特に企業理念を大事にしています。どのようなことをやってきたのかなど、企業さんの背景にあるものまでしっかり読み取って、部との親和性を見ています。横浜の企業だとやはり地域性が強いので、横浜の企業が多くなりますね。


-部が持つ価値について、地域社会の視点ではどのような点があるのか伺わせてください。

横浜というキーワードで考えると、横浜に根差した活動を大事にしています。私がGMになってから走り方教室をやっていますが、地域の中で応援される部活動といいますか、地域の中での貢献度という点で、部の価値を見出していただけるようにしていきたいという思いがあります。やはり地域活動を通してファンを増やすというサイクルを作っていく点は一番大事で、競技成績が低迷している中では、競技成績以外の面でも部が持つ魅力を作っていかないといけないと思います。そして、活動する事で人に何かを教えるという体験が直にできることが大きなメリットになると思っています。普段は逆の立場で監督コーチから指示をしていただいていますが、この経験で、監督コーチの大変さが分かるなど、良かった点もありました。人に教えるのは難しい事ですが、学生のうちに実践的に学べることは大きいと思います。

 

-地域密着の活動に関しては、プロのチームを参考になさっているのでしょうか。

新潟アルビレックスランニングクラブさんは同じ陸上競技をモデルにしたクラブなので、そこの活動はホームページを見てチェックしています。斬新な発想で運営されているなと思いますし、陸上競技であの規模の形は素晴らしいと思いますね。

 

-地域性のない企業との紐付きのポイントはどのような点でしょうか。

個人的な関係のある企業さんや、何らかの形でスポーツと関連性のある企業さん、駅伝やマラソンと接点のある企業さんをたどっていっています。そういったところで、横浜の企業でなくてもご縁があればという気持ちはあります。

 

-具体的な新しい取り組みはありますでしょうか。

先の地域密着にも紐づくのですが、「ふるさとスポンサー」という施策があります。毎年、長崎県の松浦高校から選手が来ていて、今年うちにとってはスーパールーキーが入ってきました。その松浦市はアジフライの聖地としてプロモーションを仕掛けているんですね。松浦高校はアジフライに関連して松浦市とタイアップしています。そういった点で、松浦にとっても関東地方でのプロモーションができたら面白いということもあり、うちのスーパールーキーを通じて松浦市のアジフライをプロモーションするなど地域に特化した取り組みができればいいと思いますね。北海道から沖縄まで選手が来ているので、そういった形で支援していただけるような取り組みを今後していければと思います。

 

自立した運営を目指して

部の強化をしていくために欠かせない資金の獲得。資金面で大学に頼り切らない部活動の運営を目指していくことが求められる。部の現状を踏まえ自分たちの価値を高めながら、企業とのリソースの共有や地域への貢献といった点に着目し、スポンサーを獲得していくことが重要である。また、ふるさとスポンサーといったユニークな視点での施策など、スポンサーシップの今後の新たな可能性の拡大にも挑戦していく点に注目していきたい。

 


 

後編では、スポンサーシップにおいて重要となる学生の視点や、大学と部活動の関連性についてお話を伺います。

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