東京大学の運動会総務部長が考える“体育会本部”の課題と存在意義
この記事でわかること
体育会本部の課題東京大学運動会総務委員会の事例
目次 [非表示]
はじめに〜運動会総務部って何?〜
初めまして。
東京大学運動会総務委員会(通称:総務部)委員長の川勝です。
総務部では、「スポーツや食を通して学生生活を豊かにする」という運動会理念実現のために日々活動をしています。
任期:4年8月末
入部時期:原則1年または2年(私は1年の9月に入部しました)
人数:59(2019年8月現在)(内非運動部員:9人)
男女比:3対2
活動内容:
・東京大学生全体に向けた健康増進、スポーツイベントの開催(駒場運動会、料理教室、ヨガ教室等)
・運動部全体の統括・運営(予算配分、名簿管理、運動部全体向け会議(常務会)の開催等)
・運動部支援(横のつながり促進、キャリアサポートイベント開催等)
・各種イベント、運動部試合広報
・大学近隣地域でのイベント開催
・公式戦(七大戦、双青戦)運営
他大学でいう「体育会本部」という組織に近いですが、体育会本部はあくまで組織構成が体育会(つまり運動部)のみであることが多く、上記のうち運動部に該当する部分が仕事内容の大半になるところが総務部との違いになります。(体育会本部の形態や仕事内容も大学によって様々です。)
ただ、とりあえずは「体育会本部のようなもの」と思っていただければ基本的に大丈夫です。
総務部(や体育会本部)が抱える課題
運動会という組織特有の悩みもありますが、この記事では他の体育会本部にも該当するような問題を中心にとりあげたいと思います。
問題その1-資金不足-
予算の関係があるから仕方がない、ということもあるかもしれませんが、それでも、その中で何ができるかを現在模索中です。
東大はそもそも運動会と大学の関係を整理する段階であり、その中で企業からの協賛というのはどうなのか、という動きにくい状態です。
ただ、将来的には協賛についても本格的に考えていかねばならないと私は思っています。
また、院生や東大職員、近隣地域などを巻き込んで運動会という組織の枠組みをより広く捉え直し、運営することが考えられています。
また、財源確保を考えると同時に、総務部としての活動の中で、よりシビアに必要な資金と、削減できる資金を見極め、支出を可能な限り最小限にする努力もしていく必要があります。
問題その2-広報力不足-
広報ツールとしては、
・SNS(Facebook, Twitter, Instagram)
・ビラ
・ポスター
・立て看板
・運動部向けメールリスト
・HP
広報内容としては、
各種イベント開催告知、運動部試合情報、総務部活動報告、スポーティア宣伝
などがあります。
しかし、費用対効果が小さいものも多く、一つの情報を適切に届いてほしい層に、より広く知ってもらうための検討を進めています。
コンテンツ力のあるイベントも、歴史的な試合結果も、知らなければ興味を持つことも、一緒に盛り上がることもできません。広報は、すべての活動の窓口です。
また、試合情報に関しても、現在は「特に告知して欲しい試合情報を各部から募集」し、それを広報するという形をとっており、リアルタイムで試合結果をまとめて広報するということができていません。
これについても、今後HPで現在の各部試合情報を載せるための準備を進めています。
問題その3-モチベーション-
現在総務部は全部で59名であり、比較的大きな組織となっています。
そのため、他大学の体育会本部と比べ、新規イベントを立案・運営した、組織改善に向けての活動は活発的だと言えます。
しかし一方、全員が全員同じモチベーションとは言えません。
総務部、ないし体育会本部という組織は独特な組織です。
まずは一般的な話から。
体育会本部という組織の存在感は、概して薄いことが多いです。今まで出会ってきた体育会本部員の人に話を聞くと、もはや形骸化しつつある組織も少なくありません。
体育会本部というのは、各運動部から派遣されるという形式が多いです。
そして、それに積極的に、自分から志願してくる人はあまり多くないのが現状です。
かく言う私も、ジャンケンで強制的によくわからないまま来た身でした。ですので、そのような形で集まった組織の性質上、やる気がない、モチベーションが湧かない人が多々いるのはある意味仕方がないのかもしれません。
他の大学によっては、「そもそも集まりに来てくれない」「形だけ籍を置いている幽霊部員」という人が多く存在する場合もあります。
総務部構成員の大半は運動部員です。
私は、自分の所属する運動部が辛いと思った時に、総務を少しでも、自分の居場所として使ってもらえたらと思っています。みんなにとって、この総務がどんなものだったかはわかりませんが、少なくとも、そんな場所であって欲しいと願っていました。
そのためになにか具体的で革新的な策を講じられたわけではありませんが、総務の同期や先輩、後輩と真面目な話もくだらない話もして、総務部屋でだらだらして、そんな中で総務が居心地の良い場所になってくれたらと思っています。
結局モチベーションは、人との関わり、そこの組織で一緒にいる人が好きになれるかが大きいと思います。
ですので、「総務部の人を好きになってもらう環境作り」も委員長や幹部の大事な仕事の一つではないかと思います。
総務部でやりたかったこと
私が委員長に就任してやりたかったこと(やったこと)は以下の通りです。
・運動部との連携強化
・他大学の体育会本部との繋がり強化、情報交換の活発化
・総務部内のガバナンス強化
・地域や院生など学部外へ運動会の活動領域拡大
・他の学生団体との関係構築
様々な方面に手を出している印象を受けると思いますが、これらの活動目的は共通していて、「総務部の存在価値を確固たるものにしたい」という想いがあったからです。
例えばガバナンス強化。
学生主体の組織にありがちなことなのですが、総務部というのは属人的で、やる気があって動ける人がいれば成功、いなければ失敗。
そんな不安定な組織です。
それをなくしたかったのです。
UNIVASやそれに付随する話で、「運動会は要らない」「運動会総務部は要らない」という意見もあるかと思います。
もし、この組織が何もしていない、自己満と怠惰で満ちた組織ならもちろん要らないと思います。消え去るのは当然でしょう。
でもそうじゃない。
少なくとも今、模索し、動いている人たちがいるのにそれを否定されるのはたまったものじゃない。
できることはやるべきじゃないか。そう思います。
大学に、社会にその存在意義を否定されないことをもっとやっていきたいと思います。
もちろんこれらは全部自分一人だけですることではなく、頼りになる総務部のみんなで進めてきた、あるいは今も進めているものです。
でも現段階で形になったのは少しです。
自分のやりたかったことの目的とビジョンを後輩に引き継ぎ、場合によっては学生が終わるまでに自分ができることをもう少し頑張ろうと思っています。
委員長をやってみて感じた魅力
委員長って大変?とよく聞かれました。
大変だと思います。
うまくやれてないのではないか、他の同期だったら、先輩だったらもっとうまくやっていたのではないかと思い、そのプレッシャーなり自己嫌悪に負けそうになることもしばしばありました。
漠然とした不安やもどかしさとの戦いでした。
委員長という大変貴重で、みんなが経験できるわけでないことをやらせていただいていることは間違いないことです。
たくさんの人に支えてもらい、助けてもらっているのはそれはそうです。
でも、それがわかっていても、いろいろ嫌になって全部投げ出して、全部なかったことにして、お布団にこもっていたいと思うこともありました。
総務の仕事、体育会本部の仕事というのは決して理解されやすいものではありません。
「ぶっちゃけ総務要らなくない?」
「東大なんて別に部活動に力入れている大学でもあるまいし。」
様々な人に様々なことを言われました。
そして、それらは、偏見もあるけれど、一理あるなと思う話もありました。
でも、一理あろうが二理あろうが、総務の仕事を投げ出していい、見捨てていいものではなく、この組織のためにできることを考えなくてはなりません。
私は、この運動会という組織、総務部という組織が大好きでした。
大好きな人のために、今頑張っている人のために、部活があったり就活があったり、その他やりたいことがある中で、モチベーションが上がりにくい中でそれでも総務に時間を割いてくれている仲間のために、私も一緒に今何ができるかを考え、動き続けました。
ここまでそれなりの熱量を持って取り組めているのは、やはり総務を通して関わる人々の存在が大きいと思います。
運動部の人とお互い頑張ろうなって話をするから、七大学や六大学を始め他大学の体育会本部の人と会ってお互いの同じような愚痴を言って励ましあっているから、自分だけ「もうしんどいのでやめました」なんて言ったら彼らに会わせる顔がない。
それだけです。
でも私が頑張るには十分すぎる理由でした。
崇高な思想や想いなんて語れません。
ただ、次に会った時に、話せるように。
一緒に頑張ってくれている総務同期や後輩のために。
委員長という立場でしか見えない景色があって、委員長でなかったら出会えなかった人がたくさんいました。
その景色を見て、その人たちと話し、新しい刺激、新しい価値観を得ることが私には何よりも楽しかったのです。
もし、それを私と同じように面白そう、楽しそうと思える人にとっては委員長という役職は十分魅力的なのではないでしょうか。
体育会本部という組織について
大学スポーツについて考え、自分なりに動くパッションの熱い人々と会って語らうのは本当に刺激的で日々勉強になります。一方最近、簡単に言えば「そうではない人」にも会いたいという気持ちが強いです。
いわゆる体育会本部という組織は、知られていないだけで実は結構様々な大学にあります。
しかし例えば、大学スポーツについて考えるシンポジウムをしましょう!と言った時にみんなが興味を持って来るわけではありません。知ったところで、お知らせを受け取ったところで一体幾つの大学の体育会本部員がくるでしょうか。
今までもいくつかの体育会本部の人に出会ってきましたが、基本的に体育会本部というのは孤立した、閉鎖的な性質が強い組織だと思います。
その中で、運動部に所属していながら自分の意思とは反して無理やり膨大な事務仕事をやったりしているわけです。
そういう人たちからしたら大学スポーツを語る?面倒そうな話だな…と思っても決しておかしなことだと私は思いません。かくいう私もジャンケンでよくわからないまま総務部に派遣された身なので、あまり活動が積極的でない体育会本部の人の気持ちもそれなりにわかるつもりです。
ただ、大学の運動部活動を盛り上げようという話で、体育会本部ではない人が自主的に動いているのを見ると、頼もしかったりすごいなって思う気持ちと同時に、そこの大学の体育会本部の人たちは何をしているのだろう…というのが気になってしまう自分がいます。
別に、体育会本部ではないやつが大学スポーツを語るな!ここは俺たちのテリトリーだ!なんて意味不明なことを言いたいわけでは決してなくて、運動部の人も、運動部じゃない人も、体育会本部の人も、そうじゃない人も、みんな、ただ大学が一緒だからというただそれだけで、いや、なんならただ大学が近くにあるというだけの近隣住民の人とかも巻き込んでスポーツを通して繋がり、盛り上がるような、そういう形が一つの理想形だとした時、そこに、そうなるまでに運動部を陰ながら支えてきた体育会本部がちゃんと、関わっていてほしいという想いが個人的にあるのです。
時代は大学スポーツ変革期。
今までずるずると行われてきた大学運動部活動のしくみを大きく変えようという動きが出ています。
そこで、じゃあ大学はこういうことを部活にしましょう。これもしましょう。
と言って気付いたら、あれ?そういえば体育会本部は何をしているの?要らなくない?という状況ができてしまいかねないのではないかと思います。
議論の上でいらないと判断され、どこかの組織だか部署だかに吸収されるというのは十分ありうる話でしょう。
ただ、議論もないまま気付いたら形骸化。
本部員も自分たちの存在意義がわからないままモチベーションをどこに見出したらいいのかわからず、なんてことにもしもなったら嫌だなあと思うのです。
正解が出ない問題を考え続けるのは面倒なものです。
思考を止めるのは楽です。
考えなければ、見て見ぬ振りをしてしまえば、適当にやり過ごせば、まあエネルギーはそんなに必要ないかもしれません。
でも、そうだとしても、この時期だけは、ちょっと自分たちの存在意義を、存在価値を問うてみてほしい、そしてもっとできそうなことがありそうだったら色々試してみてほしい、と思ってしまう本当にお節介な自分がいます。
だから、今私は一人で勝手に行脚して様々な人に会おうとしています。
そこで出会って話すことで、何か小さくてもそこに変化があったらいいなという想いで。
そして、もし次に何か集まろうって話が出た時に、ちょっと顔を出してもらえるように。
閉鎖的な体育会本部の門戸を開く。
これが、今私がやりたくてできていないことの一つであり、委員長を退任してもできるところまで動きたいと思っていることです。
これから委員長だったりリーダーだったりで不安がいっぱいな人へ
私は決してリーダーシップがあるわけでも、仕事処理能力が高いわけでも、現状を打開するためのアイデア力があるわけでもありません(謙遜とかでは決してない)。
そのことに負い目を感じ、委員長なんて自分じゃなくても…と弱気になることもたくさんありました。
もうすぐ実質引退する身なのですが、思ったことをいくつかこれからリーダーとして頑張る人におすそ分け程度に書こうと思います。そんな偉いこと言える分際ではないのでそういう考え方、スタイルもあるのね、という参考程度に思ってもらえれば幸いです。
・自分一人で突っ走らない。振れる仕事は振る。
自分一人で終わる案件も、ちょっと重そうだったらとりあえず案件内容を共有しておく。共有するだけで精神的にだいぶ楽です。
・一緒に動いてくれている人に感謝の気持ちを伝える。
小学校で教わるような話ですが正直これは本当に大事だと思います。
・一緒にいる時間を作る。たくさん話す。お互い忙しいなら電話でもLINEでも
「直接会う」ということにこだわりすぎたため、もっと忙しい人も含めてみんなと幅広く深く関わりたかったなというのが個人的な反省です。
・常に後輩に引き継ぐ意識を持つ。
引き継ぎ資料はリアルタイムで書く。
一緒に動けそうだったら後輩を巻き込んで動く。
学生は4年でいなくなるので、ちゃんと引き継ぎ資料は作りましょう。口頭ではなくできるだけ文字にしましょう。後輩への一番のプレゼントです。
いっぱい不安なことあると思います。
私は幸いにも優秀な同期、先輩後輩に恵まれ、活動に協力してくれる頼もしい大人の方々がいて、一緒に悩みを共有してくれる他大の仲間や運動会の仲間がいたので回すことができました。恵まれていると思います。
ありきたりな話にはなってしまうのですが、どんな組織にいても、大事なのは仲間を信頼し、大切にすることだと思うので、その点だけどうか忘れずにいてくれればと思います。
偉そうにすみません。参考程度に受け止めてください。誰かの役に立てれば幸いです。
最後に
もし今大学一年生に戻ったら、私が総務部になることもましてや委員長になることもきっとなかったと思います。
その可能性の方がずっと高いと思います。
でもだからこそ、今私が色々な偶然や色々なご縁が重なった結果こうして委員長をさせていただいているというのは本当にラッキーだったと心から思っています。
関係者各位にかけた迷惑を数えたらきりがありませんが、それでも、そんな自分を支え、助け、受け入れてくれたみなさんには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
引退の挨拶みたいな流れになってしまっていますがまだまだできることはしていくつもりなので、みなさんこれからもこんな私と東京大学運動会総務部をどうぞよろしくお願いします。
この記事を通して出会ったまだ見ぬみなさんにも、いつかお酒を交わして色々な話ができればと思っています。
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