立命館大学の「体育会の価値を上げていく」ための活動をしている学生団体AVAとは?<後編>
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立命館大学の「体育会の価値を上げていく」ための活動をしている学生団体AVAとは?<前編>では、立命館大学AVAの活動について紹介してきましたが、後編では、代表の根上くんにクローズアップしていきたいと思います。
※本記事は、2019年1月29日に執筆しました
「自分」-「競技」=で気付かされた現実
僕は、大きな大きな自信と決意を持って立命館大学の硬式野球部に入部しました。地元を離れ、関西の強豪・立命館大学への進学を決めたのも、大学引退後、社会人まで野球を続けるためでした。高校時代は、ある程度活躍し、地方大会決勝まで行って、テレビや新聞にも載り、満員の球場で試合をした経験もありました。
しかし、入部直後から思うようにはいきませんでした。ドラフト1位でプロへ入団するような選手や、甲子園で活躍した同級生、自分よりはるかに身体能力の高い選手を目の前にし、「こんな人たちが野球で飯を食っていく人なのか…。」と自分の能力に限界を感じ、徐々にモチベーションを失っていきました。
その後1年の冬に選手を辞め、学生コーチになることを決意しました。
そこで初めて自分自身が今まで本当に野球しかしてこなかったということに気付かされました。
自分-競技=『何者でもない自分』という現実を突きつけられた瞬間です。この時は本当に辛かったのを覚えています…。
「このままではまずい。」という危機感から、様々な行動に移し始めました。某プロ野球球団の長期インターンに行ってみたり、就職活動を人より早く始めてみたり、ユニサカ主催のイベントに参加してみたり、スポーツビジネスに関する本や記事を徹底的に読みあさって、アメリカへ行ってみたり、自分が本当にやりたいことは何なのか、徹底的に自分と向き合いました。
かっこよく聞こえそうなことばかり言いましたが、途中でカフェ巡り、インテリア、アート、ファッションなどまったく関連のない分野にハマった時期もあります(笑)
本当に、今まで興味がなかった様々なことにも目を向け、"何者でもない自分"から抜けだすために必死でした。正直部活の仲間や両親にも心配され、迷惑を掛けてしまっていた時期だったと思いますが、この時期があったからこそ今の自分がいると思っています。
そんな迷走の中の、運命的な出会いが「AVA」でした。
僕がAVAと出会った時は、AVAが地域貢献活動から、活動の幅を広げていろんなところに繋げていこう、AVAという組織を大きくしていこうというフェーズにあったタイミングでした。大学スポーツの現場で常に感じていた課題観と、AVAの活動方針や理念が絶妙にマッチしていました。
現場で感じていた、日本の大学スポーツの課題
これは、大学や部活の規模によって全く変わってくると思っていますが、僕は特に2つあると思っています。
1つ目は、資金不足によりアスリートにとって最適な環境が整っていないこと。
2つ目は、体育会学生がキャリアについて考える時間が少なすぎることです。
1.資金不足によりアスリートにとって最適な環境が整っていないこと
日本の大学スポーツはとにかくお金が掛かります。うちの野球部の場合、部費に加えて、遠征費、リーグ戦の交通費、道具費など競技を続けるためのお金をとにかく払い続けなければなりません。
そのため、部員のほとんどがバイトをします。
バイトをすることは決して悪いことではありませんが、練習終わりの身体を休めたいタイミングや、深夜バイトなどで本当にやりたいはずの競技に支障が出てしまい、さらには本分である学業にも悪影響を与え、まさに本末転倒になってしまっている状況にずっと課題を感じていました。
「野球ってお金掛かるよねぇ…。」
— 根上一茂 / 立命館大学AVA代表 (@kazushige_ngm) 2018年12月17日
で終わらせたくない。
これに加えて、入学金や授業料、家賃、学校やリーグ戦の交通費、遠征費、身体作りに必要な食費、日々の生活費…。
これを賄うためのバイトなんて競技に悪影響で本末転倒。
部活単位で経済的に自立して学生の負担を減らさいないと。 https://t.co/yP3TCYBeVQ
ニューヨークでスポーツビジネス研修に行った際、現地の大学を訪問し、体育局のトップの方と話す機会がありました。その圧倒的な施設環境を目にして僕が、
「球場や体育館、トレーニング施設など、こんなにも環境が整っている状態で学生は部費をいくら払っているのですか?」
という質問をすると、相手の顔に“?”が浮かびました。意味が分からなかった僕は続けて、旅費や部費の話をすると、
「あなたはサークルか何かに所属しているのですか?」
と言われてしまいました。
僕はその出来事がショックで今でも忘れることが出来ません。アメリカと日本の大学スポーツを取り巻く環境に大きな差があることを痛感した瞬間でした。
とても悔しい思いの中、自分の部活に戻った時に、これはどうにかしないといけないと強く決意しました。
— 根上一茂 / 立命館大学AVA代表 (@kazushige_ngm) 2018年12月17日
お金稼ぐために大学野球があるわけじゃないって考える人の意見は尊重するけど、大学アスリート(の保護者)が年間どれほどのお金を投じているのか分かった上で考えてほしい。
— 根上一茂 / 立命館大学AVA代表 (@kazushige_ngm) 2019年2月16日
僕らはお金を稼ぐために野球やってるんじゃなくて、ただより良い環境(広義な意味)で没頭(勉学含め)したいだけ。
2.体育会学生がキャリアについて考える時間が少なすぎるということ
2点目の課題は、日本の新卒一括採用の文化と体育会学生の就活の現状の相性の悪さです。
日本の新卒一括採用制度は一部の海外とは違い、一律のタイミングで“就活”が開始され、一律のタイミングで全員が就社します。就活が始まってから、限られた時間の中で情報収集と内省(自己分析等)をしないといけないわけですが、これが体育会学生には不利に働くのではないか?と考えています。
・部活動が通年で行われ、インターン等をする時間がないこと。
・週6日の部活動で、多くの時間を割けないこと。
・就活のピークのタイミングと部活動シーズンが被っていること。
これらが体育会学生の現状です。これらを踏まえて、体育会の学生は情報収集を早めに行ったり、時間を確保するために指導者とコミュニ―ケーションを取ったり、状況に適応するためのアクションを起こすべきはずです。しかし、現状は体育会学生自身がそれを認識出来ていないこと、支える指導者、保護者、大学関係者も必要という認識が薄いと思っています。
大学スポーツの現場に3年間いて、課題は見えてきました。ですが、僕の中で上述したような課題を解決するには長期的な視点、かつ、大きな影響力が必要だと思っています。ここは残念ながら僕が在学中に全て解決できることではない、というのが結論です。
それでも、その課題を解決するための基盤はきちんと作りきってから卒業したい。
最終的にお金を生み出していくための流れを、今作っていければと思っています。
僕が思うこの団体のゴール
AVAを、体育会学生にとっての人材輩出の場にしたいと思っています。どうしても体育会に所属すると、競技だけに目が行ってしまうのが、現状だと思います。スポーツで食べていける人は、ほんの一握りです。大学スポーツで人生が終わるわけではなく、あくまでも将来の過程に体育会・部活動が存在するのにも関わらず競技のことしか頭に入れないのはかなり危険度の高い博打です。前述したように、それは僕自身が身を持って経験しました。
AVAがあることによって、大学スポーツを通じて競技だけでない様々な経験が出来るようになります。実際にそこで経験を積んだ人が社会に出て、活躍している姿を発信し、立命館大学の体育会の価値を上げ、立命館大学自体の価値も上げていければ良いなと思っています。
実際に、先輩たちの就職先もすごいですが、最初からそれに見合う人材であったわけではなく、活動を通じて成長していった人が多かったと思うので、継続的にそういう状態の団体であれれば良いなと思っています。
そんな中でこれからの僕の役割は、団体の顔として外への発信に力を入れていくことだけでなく、90人のメンバー全員が楽しく、成長できる環境を整え続けることが僕の大義であると考えています。
あと1年で何が出来るのか考えた時に、ここまで話してきたことの全てが実現できるわけではないということもわかっています。僕がいなくなったその先も、持続可能な基盤作りを徹底的に進めていくことが僕の役割だとも思っています。
僕最終的なゴールは、「日本の体育会のモデルになること」です。そのための事例作りをしていきたいと思っています。この記事を読んで、少しでも活動に興味を持っていただいた他大学の方がいれば、繋がっていけるようなきっかけになると嬉しいです。
学生のためにある大学スポーツを競技横断的に、大学の垣根も超えて学生たち自身で盛り上げていけるような状態に少しでも近づいていけるように、今自分ができることをAVAで行なっていこうと思っています。
完全優勝達成????
— 根上一茂 / 立命館大学AVA代表 (@kazushige_ngm) 2018年5月26日
今年の立命館が強い理由がこの動画に詰まってる。この勢いは全国でもやっちゃうかもしれないぞ。 pic.twitter.com/W5mTbWjVoC
根上 一茂 ねがみ かずしげ
立命館大学AVA・代表
兼 硬式野球部・学生コーチ
金沢高校→立命館大学
・Twitter:@kazushige_ngm
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