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スポーツアドミニストレーターが描く大学スポーツの未来〜筑波大学アスレチックデパートメント〜

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2022年07月31日

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日本の大学スポーツ界で、常に最先端の取り組みを続ける筑波大学。

その取り組みを牽引しているのが、筑波大学が2018年に設立した「アスレチックデパートメント(AD)」です。

「最高の学校スポーツプログラムを創り、日本社会の未来に貢献する」というビジョンを掲げ、日本の環境に合った学校スポーツ活動のあり方を追求しながら、様々な取り組みを進める筑波大ADは、2021年2月に、スポーツ庁とSPORTS TECH TOKYOが共同で開催する INNOVATION LEAGUE 2021 コンテストにて「パイオニア賞」を受賞しました。



筑波大ADにおいて、これまでホームゲームをはじめ、様々なプロジェクトを企画・運営しているスポーツアドミニストレーター 米原博章さんに、日本の大学スポーツが秘める可能性とその未来について、伺いました。


自己紹介


こんにちは、筑波大ADにてスポーツアドミニストレーターの米原です。

2018年に採用され、今年で3年目となりました。

これまで、ホームゲーム「TSUKUBA LIVE!」や、筑波大学スポーツに関するメディアイベント、筑波大学スポーツPR動画や、各種SNSコンテンツ、チームのライブ配信など、主に「コミュニケーション」に関するプロジェクトのプロデュースを中心に行なっています。

特に2年前にプロデュースしたYouTubeコンテンツ「筑トレ」は、累計100万回以上再生され、ちょっとしたYouTuberのようになっています。


スポーツアドミニストレーターって何?


そもそもスポーツアドミニストレーターって何?って話なのですが、スポーツアドミニストレーターについて、どのように説明すればいいか、いまだに頭を悩ませています。

スポーツ基本計画(文部科学省)においては、以下のように定義されています。

各大学におけるスポーツ分野の取組を戦略的に推進するため、スポーツ分野を一体的に行う部局(=AD)において、当該部局を担う人材

ちょっと、伝わりづらいです。こう聞いて、スポーツアドミニストレーターなりたいと志してくれる若者は、そう現れないでしょう・・・

今のところしっくりきている説明は、「組織が目指す目標を達成するために、スポーツを通じて何ができるか戦略をたて、その事業や取り組みを、企画・実行する人」です。これもまあ、噛み砕けていないのですが・・・

近しい職としては「マネージャー」ですが、マネジメントが表す範囲は、「スポーツに関連する(すでに決まった)事業を遂行する」ことです。

スポーツアドミニストレーターの醍醐味は、やはり「戦略」を立てることです。

組織にとっての目標を達成するためにスポーツを軸に戦略をたてて、その企画から実行まで、オールインワンで携わるという点では、非常に広域にスポーツを扱う、ダイナミックなところにやりがいを感じています。


筑波大学ADでの取り組み


筑波大学ADは「最高の学校スポーツプログラムを創る」というビジョンを掲げています。それに対して一つが学校スポーツの健全化、二つ目が最大化、三つ目が横展開という、3つのミッションを掲げています。



学内におけるスポーツに関連する制度設計から、事業の展開、卒業生や地域、企業との繋がりの醸成など、これらがスムーズに動き始めることで、大学スポーツの価値が高まる光景を示せると思います。

筑波大学には素晴らしい指導者、学生の方々が在籍し、たくさんの素敵なチームが活動しています。こんなにもリソースが揃っている大学は、日本中を見渡しても、珍しいでしょう。そしてそのリソースをADがあることでより良い好循環を生み出していく。

大学スポーツの未来の姿を示すためには、筑波大ADがまずは先頭に立って、日本の学校スポーツ、大学スポーツのモデルケースにならなければいけない。そんな、強い使命感を持って組織が動いています。



そのなかで、私が特に担っている領域が、「学生とのコミュニケーション」と、スポーツを通じて「賑わいを創造する」というテーマです。

私が得意にしている分野の一つに、イベントのプロデュースがあります。3月26日に向けて企画をしていたホームゲーム「TSUKUBA LIVE!」や「Future Creation Program(筑波大ADが学生から、やってみたいことを募り、実現に向けて共創するプロジェクト)に関連して、昨年は100人以上の学生と共に、10以上のプロジェクトをプロデュース、企画・運営してきました。



もう1つの得意分野が、広報です。SNSの運用やYouTubeの動画コンテンツ制作。筑波大学ADの広報は、チームの広報ではなく、かといって競技結果を発信するわけでもない。いかに筑波大のスポーツをより多くの人に知ってもらうのか、そしてそこに生きる学生の魅力を「筑波大生」として届けていくかという面では、少しユニークだと感じています。その発信のための戦略立てからコンテンツ企画、また制作まで全てを担っていました。

これは、昨年の力作です・・・(笑)


そもそも私が、スポーツアドミニストレーターになるまで、のことを紹介します。


棒高跳を通して、スポーツに没頭していた学生時代


もともと陸上競技の棒高跳を専門にしており、コーチになりたかったんですよ。そしてオリンピックの金メダリストを育てるというのが夢で、それは今でも変わりません。そのために大学院時代にアメリカの大学でアシスタントコーチを2018-19シーズンでやっていました。



その中で、コーチングに関して世界一流の技術やトレーニングのシステムを学び実践してきました。一方で、その中で何が一番日本との差を感じたかというか、大学のスポーツ環境だったんです。いかに大学スポーツが投資されるべき対象になっていて、だからこそ専属コーチやスタッフが配置されていている。ある程度全米どこに行っても、一流の指導と教育が受けられるような土壌がアメリカにはあったんです。だからこそ、スポーツに打ち込みたい学生は自分にあった大学を選んで、そこで思う存分に勉強しながら、友達と遊びながら、スポーツに打ち込める。この環境自体がちょっともう別格だなと思ったわけですね。

そこで、もし自分がオリンピックの金メダリストを出すって考えた時に、どうやったらいいかなっていう一つの答えが、コーチになることよりも先に、日本の大学スポーツの制度と環境を整えることだったんです。じゃないと、戦いたい世界で戦えないなっていうのをすごく実感しました。

帰国してちょうど、母校の筑波大にADがあって、ここで日本の学校スポーツのモデルケースを一緒に創ることにトライしたいなと思ったんです。

意外かもしれませんが、私としては、「日本の大学スポーツを改革したい!」というよりも、「日本の棒高跳を世界で戦えるレベルにしたい」というのが、スポーツアドミニストレーターになった一番のきっかけです。


アメリカに留学した経験


おそらく多くの人が想像しているアメリカの大学スポーツは、アメフトかバスケットの有名カンファレンスのチャンピオンシップや全米学生選手権だと思います。これって、アメリカの大学スポーツ界でもめちゃくちゃでっかい試合です。

1シーズンではありますが、アメリカの大学スポーツに身を置いて思ったことは、大きな試合をすることよりも、そもそも各学校にある制度や各チームの運営、また学生に提供されているプログラムには真似できそうなことがたくさんあります。



特に、アメリカの2部、3部校に目を向けると、そこにもやはりADがあり、1部校に比べると傾向として競技力は低く、予算もさほどないんだけど、まあ環境はしっかり整っていて、そこにしっかりとSA、コーチがいて。これは別に日本の私立校ではすでにありそうな光景です、ただそれを全米全体で維持しようという仕組みづくり、ここが重要です。この仕組みがあるからこそ、熱狂できる試合と応援し続けられるチームが生まれるわけです。つまり、そのためにはやっぱり筑波大ADでも掲げるミッション「健全化」は最重要になってくるわけです。



そして「最大化」のテーマ。学校やその近隣で試合をする。最低限試合やるときに在校生や卒業生、地域と、そしてパートナー企業へのホスピタリティがあって、応援したくなる環境・学校づくりみたいなことはやっている。



これって別にお金があるないに関わらず、「この視点から考えられるか」の問題だと思うんです。アメリカの大学スポーツはすごいな〜という前に、あの姿になるまで100年以上かけて成長させていますが、その土台となる制度を支える哲学は変わらない、その重要性を感じました。


日本の大学スポーツを大改造しよう!


そんな中で日本の大学スポーツをより良くしていくためのポイントはなんだろう?と考えると、今の段階での私の答えは「学生が楽しむ環境づくり」だと思います。



日本とアメリカの比較だけで見ると、日本には学生アスリート、スポーツに関わったことがある学生が本当に多いです。そして、所属している部活やサークルを自分たちの手で守っていく、良くしていくという想いは、日本の大学スポーツにはより深く刻まれています。

この「想い」をしっかりと形にしていくための前提となる仕組みづくりは筑波大ではAD、スポーツアドミニストレーターが大学としてできることだと思います。そしてその中で、思いっきり楽しみながら学生の皆さんが当事者として「想いを形にする」ために動く、これができると、日本の大学スポーツは急激に面白くなると思います。


日本の大学スポーツを盛り上げるために、今からできること


ここには2つの視点が必要です。

一つ目はまず「制度づくり」。ここではチームの中でのルール作りと組織づくりに注目します。様々なアクションを起こして行ったとしても、結局ルーズなチームは必ずつまずきます。スポーツアドミニストレーターとして、筑波で44チームの学生と関わっていますが、これはチームのサイズが大きい、注目度が高いチームほど、注意が必要な視点になります。

こういうチームが増えると次にできる展開が、複数チームが協働するということ。筑波大は大学がアスレチックデパートメントを設置し、この役割を担うような体制をとっていますが、これは学生でできることも結構多いはずです。



二つ目は「隣のチームに興味を持つこと」。部活に所属すると、どうしても目の前のチームのことで一杯一杯になっているように見えます。やっぱり学生のうちに、一つにコミュニティに依存するのはもったいないです。少し息を抜いて、同じ学校、同じユニフォームを着て戦う「隣のチーム」に興味を持つことがとても重要だと思います。



想い描いている日本の大学スポーツの理想像


まずは「学生アスリート」について。私も中・高・大とやってきましたが、中高生が、「大学生みたいにスポーツやりたいな」って思えるぐらい、今の学生アスリートがプロよりも輝いている、そういった光景が日本中にたくさん生まれたらいいなあと思っています。



その18歳から22歳っていう年代、いわゆる社会人になる前の4年間で、思う存分にエネルギーを投下して全力でやり切るという経験をして欲しいと思っています。もちろん、それは別にスポーツじゃなくても良い。ただ、大学スポーツに関わる人間としては、大学スポーツに関わる学生の皆さんには、競技者として、またはマネジメントしてなど、スポーツを通して「やり切る」という経験をして欲しいです。その積み重ねが、社会から見た時に「大学スポーツって面白い!」になるだろうし、そうできる環境づくりを、私が担いたいなと思います。



そしてもう一つが「チーム・学校」について。オリジナリティがめちゃくちゃに出て来てほしい。要は筑波大と言えば、「これだ!」というような、その学校やチームのプライドを各学校がこだわって、個性と個性がぶつかるような、なんかそういった彩りのある大学スポーツになるといいなと思っています。

それぞれの学校・チームの伝統やスタイルを尊重することが、色になります。そういった伝統とかプライドを再認識する、そして価値にしていく当事者は、絶対に各学校の学生自身です。そういった「自分たちらしさ」に対して、自信を持って、とことん大事にしまくって欲しいなあっていう風に思っています。



ホームゲーム開催情報

「TSUKUBA LIVE! Summer Tuuune!」 2種目同時開催



⚫︎バスケットボール

 日時:8月7日(日)  開場 13:30 開演 14:00 

 会場:筑波大学中央体育館

 内容:1. 試合(男子バスケットボール)
    2. 試合前後パフォーマンス

 主催:筑波大学アスレチックデパートメント


⚫︎水球

 日時:8月7日(日)  開場 17:30 開演 18:00 

 会場:筑波大学屋外プール

 内容:1. 試合(男子水球)
    2. 試合前後パフォーマンス

 主催:筑波大学アスレチックデパートメント


▼無料チケットなどその他詳細は下記サイトより

https://tsukubalivesummer2022.studio.site/

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