「真剣に楽しくサッカーをする」ビジョン体現のためにできること~東京大学ア式蹴球部女子~
初めまして。東京大学ア式蹴球部女子の加藤彩花です。私たちア式女子は創部10周年を目前にして、今までの活動とこれからの向かう先について考える時期になっています。今回は、昨年の衆議院議員選挙の投票の呼びかけをきっかけとして現在の課題の解決方法を考える中で、今後のア式女子の目指すところをどのように考えているのかを共有したいと思います。
目標達成に必要なものとは
東京大学ア式蹴球部女子は2014年に創設された、今年で9年目の部活です。2022年2月現在、11人で活動しています。その半分ほどはア式に入るまでサッカーをしたことがない人で、残りの半分も子供の頃からずっと続けている人ばかりではありません。初心者も経験者も一緒になってサッカーを真剣に楽しむ場が東大ア式女子です。初心者でも試合経験を積めるようにするために、2020年に東大ア式女子主導で関東大学女子サッカーリーグの中にCiEリーグを立ち上げ、今年で2年目を終えました。
CiEリーグについてはfootballista記事をご参照ください『Creation is Encouraged――3部リーグで12試合153失点。東大サッカー女子たちが仕掛けた「皆が輝ける場所づくり」』
私たちはCiEリーグが開幕してから、ずっとCiEリーグ優勝を掲げてきました。初年度は優勝することができましたが、二年目となった今年度はチーム数が増えたこともあり、7チーム中4位という結果に終わりました。リーグのレベルが上がっていることは喜ばしいことですが、私たちはCiEリーグ優勝を達成できなかったという意味で悔いが残っています。
このような結果を受けて、来年度の目標には再びCiEリーグ優勝を掲げましたが、ただ練習するだけでより良い結果が得られるわけではありません。どうやったら優勝できるのか、より現状の課題に則して考え、対策を実行に移す必要があります。
もちろん真剣に練習することは重要です。ただし、気持ちの面では解決できない環境の問題として、根本的にあるのは、部員が少ないことだと言えます。
サッカーはそもそも基本的には11人制なので(CiEリーグには事前協議によって両チームの人数を減らして試合を実施することができる枠組みとなってはいますが)、ベンチに控えがいない、怪我人が出ると欠員が出るなどのわかりやすい問題があります。練習の時も人数が少ないとできる練習が限られてきます。
そしてチーム内でのスタメン争いが常に起こりにくいので、競争によりチーム全体の力が底上げされるというシステムが働きません。それぞれの事務仕事の負担が重くなったり、さらなる練習へのコミットや新しい活動への展開などがしにくかったりというのもまた問題だと認識しています。
これらは人数が少ないどこのチームにも当てはまるのではないでしょうか。そして部員の獲得のため、毎年必死に新歓活動をしていることと思います。それでも人数が少ない現状を変えることは難しいです。何が欠けていて、何が必要なのでしょうか?
部員を増やすには?
そもそもなぜ私たち東大ア式女子の部員は少ないのでしょうか?根本的なところで言えば、東大に女子が少ないこと(2割ほどしかいない)、女子サッカーというスポーツの認知度、そもそもスポーツに興味がない人がいる、などなどキリがありません。ただ、私たちが最初にそれらの問題に取り組もうとするのは順序としてあまり良くないでしょう。私たちは実現可能で、より効果的な対応策に取り組むべきです。
私は、この問題の対処法で、私たちが実現可能なものは大きくわけて二つあると思っています。一つ目は、私たち東大ア式の存在、ありのままの私たちの魅力を知ってもらうこと、二つ目は、私たちの組織としての魅力をもっと強めることです。
まずは一つ目について。私たち部員はサッカーが好きで、ア式が好きでア式女子にいるはずです。私たちが所属していたいと感じる理由であるチームの魅力をより多くの人に知ってもらえれば、部員は増やせると考えるのは自然ではないでしょうか。新歓の時に、チラシを配ったり、イベントをしたりして新入生に部のことを知ってもらい、体験練習にきてもらう、実際にサッカーをやってみてもらうというのが、この一つ目の方針におけるアプローチだと言えます。実際にそのようなルートで入部した部員は少なくありません。
二つ目はどうでしょうか。結局は部活と新入部員のマッチングの問題なので、新入生にとって私たちが魅力的な組織に映らなければ、新入部員になってもらうことはできません。とはいえ、今のア式女子の形を無理矢理変えてまで人を集めるのは違います。今の私たちが所属するア式女子が私たちにとってベストな場所であるべきなのは確かです。すると、私たちには、「私たちがなりたい組織の姿を実現し続け、それがより多くの新入生にも魅力的である状態を常に生み出すこと」が有効だと考えられます。
魅力は「真剣に楽しくサッカーをする」
私たちア式女子の魅力は例えば、サッカーを全くしたことがない人が入部しても、一から練習してうまくなれるところ、上手な人も初心者の人も一緒にサッカーを楽しむことができる環境が挙げられると思います。個々人の意見を尊重する雰囲気や、部員全員でア式女子であるといった意識があり、学年関係なく仲が良いところ、アットホームな空気感は部員の多くがア式女子を心地よく感じている理由です。
このアットホームな空気感は「真剣に楽しくサッカーをする」というビジョンに由来しているかもしれません。実際には、このビジョンを特に意識して入部する人は少ないでしょうし、私も入部してからそのようなビジョンの存在を知りました。それでも、チームは実際に「真剣に楽しくサッカーをする」ことを体現しているように思えます。私自身、CiEリーグでの勝ちにこだわりつつ、楽しくサッカーをしているつもりです。
自然とこのような空気感が出ている理由は特定できませんが、この空気感に対して安心感があり、部員がア式女子でのびのびと活躍する基盤になっていると感じます。
私はチームの空気感に心地よさを感じてますし、すでに愛着があります。その一方で、これからチームがさらに発展していくためには、「私たちがなりたい組織の姿」の追及の余地は残っていると思います。前述の通り、私たちは究極的には「真剣に楽しくサッカーをする」ことを目指していますが、そのために必要な要素、例えば部員の数が多くないことは否定し難いです。
そこで、循環論になってしまいますが、足りない部員を増やすためには部員一人一人が「真剣に楽しくサッカーをする」ことを体現している必要があります。もう少し広い意味をとれば、「真剣に楽しくサッカーに関わる」ことで、そしてそれを知ってもらうことで、私たちの魅力がより伝わり、長期的な部の存続を支えることになると考えています。では具体的にはどうすることができるでしょうか?
魅力を伝える方法とは
少し話は変わりますが、今回この記事を書くきっかけになったのは、SNSで衆議院議員選挙の投票の呼びかけを行ったことにあります。
私たちは、FacebookやTwitter、Instagramを運用しており、一部員の発案で選挙に関する情報をまとめ、動画を作成し投稿しました。また、東大ア式女子のみならず、東大の他の部活や、他大学の女子サッカー部を巻き込んで発信しました。その結果、反響は思った以上に大きく、思わぬ評価を各方面からいただきました。
確かに、選挙は、サッカーをする集団ある私たちとは、一見無関係だと思う方もいるでしょう。しかし、私たちの若者、東大生、という属性を利用したことで多くの人に情報を届けることができました。何より、選挙というトピックを通して今まで私たちを知らなかった人たちにまで、ア式女子の存在を知ってもらうことができたのです。
そのような意味では、とても意義のある発信でしたし、これからも様々なトピックで発信することで、さらに多くの人に私たちを知ってもらう事ができると思います。
🗳18歳以上の皆さんへ🗳
— 東京大学ア式蹴球部女子(女子サッカー部) (@utashiki_women) October 20, 2021
第49回衆議院総選挙が行われます!投票は自分の意思を示す第一歩です👣
2017年の選挙では20代の投票数が60代の3分の1でした。若い世代から1票でも多く投票して、若い人の声を届けましょう🗣💭#わたしも投票します #投票はあなたの声 #VOICEPROJECT #東大 #ア式女子 pic.twitter.com/iiJDAobf7c
ただ、私たちは、そのような社会的な情報などを単に社会に共有する主体でない事も事実です。実際、この投稿の発案者は今年度をもって卒業してしまいますし、どのように継続していったら良いのか、そもそも継続するべきなのか、私たちはサッカーをするチームだからなぜそのような発信をする必要があるのだろうか、そういった議論が必要な段階に入っています。
そこで「私たちがなりたい組織の姿」についての議論に立ち戻ってみたいと思います。私たちは「真剣に楽しくサッカーをする」ことを究極的な目的としており、その実現のために部員不足を解消する必要がありました。さらにそのためには①私たちの魅力を知ってもらうこと、②私たちの魅力を強めることの二つの方向性の努力が必要であることを述べました。
この文脈で昨年の選挙に関する発信を捉えると、昨年の発信は①を十分に満たしていました。それは投稿をきっかけに、私たちの存在を知ってもらえたからです。
②については、サッカーをする東大女子の集団としてのア式女子が選挙というトピックにも関心を持っていること、社会の中での私たちの立場を考えているということを、評価してくださった方々がいらっしゃったと前向きに考えることができるのではないでしょうか。
私たちは社会に対する影響力を持っているわけではありませんが、一人でも多くの人に私たちを知ってもらい、一人でも多くの人に私たちの魅力を感じてもらうという意味があったと、私たちは私たち自身に説明することができます。
ビジョンの体現へ
このような活動は、いわゆるブランディングのようなものです。すぐに効果が出るわけでもなければ、本当に効果があるのかさえ疑わしいために、なぜしなければならないのかという問いに直面することになります。私たち部員は大学生の間の限られた時間しか部に所属しないので、それは当然のリアクションでしょう。ブランディングそれ自体の必要性については新歓活動と結びつけることで理解しやすくなりますが、その手段が私たちの興味と離れてしまうと、やる意味が薄れてしまいます。
とはいえ、そもそも私たちはそれぞれがサッカーについて、社会について様々な視点の興味を持っています。それならば、私たちそれぞれが興味を持ってやりたいこと、やったことを私たちのブランディングの一環として発信することで、前述の①私たちの魅力を知ってもらうこと、②私たちの魅力を強めることの両方を達成することができるのではないでしょうか。
すでにア式女子では、やりたい人が誰かを巻き込んで動くというスタンスは浸透しているように思われます。つまり、私たちは今までのスタンスで自分の興味を追求した結果をチームに還元することを繰り返していくべきであり、後は「発信して部活のことを知ってもらう」が「部活を知ってもらうために発信すべき」になってしまわないように気をつけるのみです。
最後に
ここまで単純なことを難しく書いてしまいましたが、私たち東大ア式女子はとにかく「真剣に楽しくサッカーをする」ことを目指し、サッカーに対する各々の興味を追求するようなチームです。昨年は選挙の発信に普段以上の反響をいただき、感銘を受けたとともに、今後のア式女子のあり方について色々と考えるきっかけとなりました。私たちは今後もサッカーに取り組む中でア式女子の存続・発展を実現できるように取り組んでいきます。この記事を読んでくださった皆様が、少しでも私たちのこれからに興味を持ってくださると幸いです。
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